インプラント手術後の神経麻痺リスクと5つの予防対策

インプラント手術後の神経麻痺とは?症状と原因
インプラント治療は失った歯の機能を回復する優れた方法です。しかし、どんな手術にもリスクは伴います。特に注意すべきなのが、神経麻痺という合併症です。
神経麻痺は、インプラント手術によって顎の神経が損傷または圧迫されることで起こります。主に下顎の奥歯のインプラント手術で発生するリスクがあります。上顎にはインプラントを埋め込む場所に神経が通っていることが少ないため、神経麻痺の発生率は比較的低いと言われています。
神経麻痺が起きると、どのような症状が現れるのでしょうか。主な症状としては、唇からアゴにかけての感覚麻痺、ピリピリとした痺れ、そして時に痛みを伴うこともあります。
具体的には、左右どちらかの唇から下顎にかけての部分が麻痺し、手で触っても感覚がなかったり、常に少し痺れているような感覚になります。例えば、左側の下顎にインプラント治療を行った場合、左側だけ麻痺することもあるのです。
神経麻痺はどのようにして起こるのか?
インプラント手術による神経麻痺は、主に2つのケースで発生します。
1つ目は「神経損傷」です。これはインプラント体を顎の骨に埋め込む際に、神経が切れてしまったり、傷つけてしまうケースです。インプラントの埋め込み位置や角度が適切でなく、手術で骨に穴を開ける際にドリルが神経に当たることで損傷させてしまうことがあります。
2つ目は「神経圧迫」です。手術中のドリリング(顎の骨を削る処置)で強い力が加わったり、インプラント体が神経の近くまで到達することで間接的に神経が圧迫されるというケースです。インプラント体が直接神経を傷つけるわけではありませんが、麻痺などの症状が出てしまいます。
経験の少ない医師に多い事例としては、インプラントの装着位置や角度が適切ではなく、インプラントの先端が骨から出てしまい、結果として神経の損傷や圧迫につながるといったケースです。
しかし、これらは極めて稀なケースであると言えます。数多くの経験や高い技術力を持った医師であれば、こういったミスは起こりにくいのです。
神経麻痺のリスクはどのくらいあるのか?

インプラント手術による神経麻痺のリスクは、実際にはそれほど高くありません。特に経験豊富な専門医による適切な診断と治療計画のもとで行われる場合、そのリスクは最小限に抑えられます。
神経麻痺が起こる可能性が高いのは、下顎の奥歯のインプラント手術の場合です。下顎の骨の中には下顎管というものがあり、その中に下歯槽神経(および血管)が走行しています。
また、インプラントを埋め入れる箇所によっては、下歯槽神経終末にあるオトガイ神経と呼ばれる神経(下顎の前から数えて4番目や5番目の歯の下に位置します)や舌神経を傷つけることもあります。
最近では手術サポート器具を用いれば、器具が危険部位にまで到達しないよう設計されているものもあります。また、術前のCTスキャンなどの精密な検査により、神経の位置を正確に把握することで、リスクを大幅に減らすことができるのです。
神経麻痺と間違えやすい術後の症状
インプラント手術後に痛みや違和感があると、すぐに神経麻痺を心配されるかもしれません。しかし、すべての術後症状が神経麻痺というわけではありません。
基本的に手術後はジーンとするような痛みが数時間続くことがあります。麻酔が切れた後の短期的な違和感や痛みが出る程度は、神経損傷の心配はほとんどありません。
痛みには個人差があり、患者さんによっては数日間痛みを感じる方もいます。一般的に、一週間以内に治まる痛みであれば、正常な治癒過程の一部と考えられます。
また、手術時に神経に麻酔が入ったり、何かしら刺激を受けたりすることで、一時的に麻痺・痺れの症状が出ることもあります。ただし神経の損傷や圧迫がなければ、自然に症状は引いていきます。
一方、一週間以上痛みがあったり、インプラントを埋め込んだ骨の奥の方がズキズキするような場合には、神経損傷の疑いがあるので歯科医院で相談することをお勧めします。
神経麻痺を予防するための5つの対策
1. 信頼できる専門医を選ぶ
インプラント治療の成功率を高め、神経麻痺などの合併症リスクを低減するためには、経験豊富な専門医を選ぶことが何よりも重要です。日本口腔インプラント学会認定のインプラント専門医など、専門的な資格を持つ医師を選びましょう。
2. 術前の精密な検査と診断を受ける
CTスキャンなどの3次元画像診断を用いた精密な術前検査により、神経の位置を正確に把握することができます。最新の診断機器を導入している歯科医院を選ぶことで、リスクを大幅に減らすことができます。
3. 手術計画について十分な説明を受ける
治療前に担当医師と神経麻痺についてじっくり話し合いましょう。どのように手術を進めるのか、神経麻痺を回避するためにどういったプランニングをしてくれるのか、万が一神経麻痺があった場合の対処法などをしっかりと説明してくれる医師を選ぶことが大切です。
4. ガイデッドサージェリーの活用
コンピュータでシミュレーションした通りに手術を行うガイデッドサージェリーは、より精密なインプラント埋入を可能にします。この技術を用いることで、神経損傷のリスクを最小限に抑えることができます。
5. 術後のフォローアップを大切にする
手術後に違和感や痛みが続く場合は、早めに担当医に相談しましょう。早期発見・早期対応が症状の改善に繋がります。定期的なフォローアップ検診を受けることも重要です。
まとめ:安心できるインプラント治療のために
インプラント手術による神経麻痺は確かに存在するリスクですが、適切な準備と経験豊富な専門医による治療を受ければ、そのリスクは最小限に抑えることができます。
万が一神経麻痺になった場合でも、多くは一時的なもので時間の経過とともに回復します。後遺症が残ってしまうケースでも、ビタミン製剤やATP製剤の服用、レーザーなどの治療により、症状を軽減できる可能性があります。
インプラント治療を検討されている方は、事前に十分な情報収集と、信頼できる専門医とのコミュニケーションを大切にしてください。シャングリラデンタル横浜歯科矯正歯科では、日本口腔インプラント学会認定のインプラント専門医による安全で確実な治療をご提供しています。インプラント治療についてご不安な点がございましたら、ぜひ無料カウンセリングにてご相談ください。
詳しくはシャングリラデンタル横浜歯科矯正歯科の公式サイトをご覧ください

著者情報
理事長 梶原 基弘NORIHIRO KAJIWARA
- 経歴
- 九州歯科大学口腔インプラント科医員 外来診療チーム長
- 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野(口腔インプラント学)大学院歯学博士
- 関東医療法人 東京都、神奈川県にて院長に
- 資格・所属学会
- 日本口腔インプラント学会
- JSOI 日本口腔インプラント学会専門医
- 九州歯科大学歯学博士
投稿論文
- Soft tissue biological response to zirconia and metal implant abutments compared with natural tooth: microcirculation monitoring as a novel bioindicator. Kajiwara N, Masaki C, Mukaibo T, Kondo Y, Nakamoto T, Hosokawa R.Implant Dent. 2015 Feb;24(1):37-41.
- Comparison of plaque accumulation and soft-tissue blood flow with the use of full-arch implant-supported fixed prostheses with mucosal surfaces of different materials: a randomized clinical study. Kanao M, Nakamoto T, Kajiwara N, Kondo Y, Masaki C, Hosokawa R.Clin Oral Implants Res. 2013 Oct;24(10):1137-43.
Two-dimensional real-time blood flow and temperature of soft tissue around maxillary anterior implants. Nakamoto T, Kanao M, Kondo Y, Kajiwara N, Masaki C, Takahashi T, Hosokawa R.Implant Dent. 2012 Dec;21(6):522-7.
