歯周病で歯がボロボロでも治せる?抜歯の判断基準とフルマウス再建の全貌

歯周病で歯がボロボロでも治せる?抜歯の判断基準とフルマウス再建の全貌
公開日: 未公開
歯周病で歯がボロボロ・・・それでも諦めないでください
「歯がグラグラして痛くて噛めない」「歯茎から血が出て、口臭も気になる」「歯医者に行ったら抜歯しかないと言われた」・・・
重度の歯周病で歯がボロボロになってしまうと、多くの方が「もう手遅れだ」と諦めてしまいます。しかし、実際には適切な治療によって、再び噛める喜びと笑顔を取り戻せる可能性があるのです。
歯周病は日本人の成人の約8割が罹患しているとされる国民病です。初期段階では自覚症状が少ないため、気づいたときには重症化していることも少なくありません。実際、歯を失う原因の第1位が歯周病であることからも、その深刻さがわかります。
本記事では、日本口腔インプラント学会専門医として25年以上の臨床経験を持つ立場から、重度歯周病における抜歯の判断基準、残せる歯と残せない歯の見極め方、そして全顎的な治療(フルマウス再建)の実際について、詳しく解説していきます。
抜歯の判断基準・・・どの歯を残してどの歯を抜くべきか
歯周病治療において最も重要かつ難しい判断が「抜歯」です。
抜いた歯は二度と戻りません。だからこそ、その判断は慎重に行う必要があります。しかし、残すべきでない歯を無理に残そうとすることで、かえって治療期間が長引いたり、他の健康な歯にまで悪影響を及ぼしたりすることもあるのです。

日本歯周病学会が定める抜歯基準
日本歯周病学会では、歯周病治療における抜歯の判断基準を明確に示しています。
歯周治療初期における抜歯の判断基準として、以下の4つが挙げられます。
- 対症療法を行っても過度の動揺により痛くて噛めず、反対側でしか噛めない状態
- 十分な歯石除去ができない、または隣の歯と固定もできないほど進行した歯周炎
- 治療中に頻繁に膿瘍が生じ、周囲の歯周組織破壊の原因となる可能性がある場合
- どのような治療計画を立てても利用価値が見出せない場合
これらの基準は、治療開始時点で明らかに保存が困難な歯を見極めるためのものです。ただし、これらはあくまで「基準」であり、実際の判断には歯科医師の技術レベルや経験、そして患者さんの状態や希望も大きく影響します。
暫間的保存という選択肢
すべての歯を即座に抜歯するのではなく、一時的に保存しておく「暫間的保存」という考え方もあります。
例えば、奥歯の噛み合わせの高さを維持するために一時的に残しておき、他の治療が進んだ段階で抜歯するケースです。インプラント治療を予定している場合、隣接部位にインプラントを埋入した後、その上部構造が装着された時点で抜歯することもあります。
このような段階的なアプローチにより、治療期間中も可能な限り噛む機能を維持しながら、最終的な治療ゴールに向かって進めていくことができます。
歯周病専門医による予後判定・・・Good、Guarded、Poor、Hopeless
一般的な歯科医院では「残す」か「抜く」かの二択で判断されることが多いのですが、歯周病専門医はより細かく歯の予後を判定します。
4段階の予後判定システム
アメリカ歯周病専門医の基準では、歯の予後を以下の4つのタイプに分類します。
- Good(予後良好):特に問題なく長期的に機能が期待できる歯
- Guarded(要注意):予後悪化の要因はあるが、現在は機能的問題がなく、治療により改善が期待できる歯
- Poor(予後不良):予後悪化の要因があり、現在機能はしているがメインテナンスが困難な歯
- Hopeless(要抜歯):予後不良で機能に問題があり、抜歯が必要な歯
この分類により、どの歯にどの程度の治療介入が必要か、また長期的な予後をどう見込むかを、より正確に判断できるのです。

歯周組織再生療法が予後判定を変える
従来は「Hopeless(要抜歯)」と判断されていた歯でも、歯周組織再生療法の発展により保存できる可能性が広がっています。
根の先端を超えて骨吸収が進んだ歯を歯周組織再生療法で保存を試みた結果、治療終了後5年経過しても92%の歯が良好に機能していたという報告もあります。このことは、適切な治療技術と経験があれば、従来「抜歯しかない」とされていた歯も救える可能性があることを示しています。
ただし、これには高度な技術と経験が必要です。一般の歯科医師と歯周病専門医では、同じ基準で判断しても「十分な治療」の内容が異なることがあります。
フルマウス再建・・・口腔機能全体を回復させる包括的治療
重度歯周病で多数の歯を失った場合、1本ずつ個別に治療するのではなく、口腔全体を一つのシステムとして捉え、包括的に治療する「フルマウス再建」が必要になることがあります。
フルマウス再建とは何か
フルマウス再建とは、歯周病や虫歯などで口腔機能が崩壊してしまった状態から、噛み合わせ、審美性、機能性のすべてを考慮して、お口全体を再建する治療です。
単に失った歯を補うだけでなく、顎関節の位置、噛み合わせの高さ、歯列の形態、審美性など、すべての要素を総合的に設計し直します。これは、建築に例えるなら、部分的な修繕ではなく全面的なリノベーションに近いものです。
フルマウスインプラント(オールオン4)という選択肢
重度歯周病で多数の歯を失った場合、フルマウスインプラント治療が有効な選択肢となります。
特に「オールオン4」と呼ばれる治療法は、傾斜をつけて4本のインプラントを埋め込み、その日のうちに仮歯を装着できる画期的な方法です。わずか1日で噛む機能と審美性を回復できるため、長期間入れ歯で過ごす必要がありません。
ただし、この治療には高度な技術と経験が求められます。コンピュータガイドシステムが使えないため、歯科医師の技術と経験が結果を大きく左右するのです。

包括的審美治療という考え方
当院では「包括的審美治療」を掲げています。これは、単に悪いところだけを対処するのではなく、精密な検査・診断を前提に、機能面と見た目の両面から理想の口元を目指す治療計画を立案するアプローチです。
治療の選択肢を一つに絞って押し付けるのではなく、複数の治療オプションを提示し、患者さんが自分に合うものを選べるようにしています。なぜなら、患者さん一人ひとりのライフスタイルや価値観、経済的状況は異なるからです。
治療の流れ・・・初診から治療完了、そしてメインテナンスまで
重度歯周病の治療は、一朝一夕には完了しません。
段階的に、そして計画的に進めていく必要があります。ここでは、当院での標準的な治療の流れをご紹介します。
初診・カウンセリング・精密検査
まず初診では、時間をかけた丁寧なカウンセリングを行います。患者さんのお悩みや希望をじっくりとお聞きし、現在の口腔内の状態を詳しく把握します。
精密検査では、レントゲン撮影、歯科用CTによる3D画像診断、歯周病検査、口腔内写真撮影などを実施します。これらのデータを総合的に分析し、どの歯を残せるか、どの歯を抜歯すべきか、そして最適な治療計画は何かを判断します。
痛みや欠けなどの急性症状がある場合は、応急処置も行います。
初期治療(土台づくり)
本格的な治療に入る前に、まず口腔内の環境を整える初期治療を行います。
歯垢・歯石の除去、歯肉炎症の軽減、ブラッシング指導など、基礎的な治療を徹底します。この段階をしっかり行うことで、その後の治療の成功率が大きく変わります。初期治療後には再評価を行い、歯周組織の改善状態を確認します。
本格治療(オーダーメイド治療)
初期治療で口腔内環境が改善したら、本格的な治療に進みます。
抜歯が必要な歯の抜歯、歯周外科治療、歯周組織再生療法、インプラント埋入手術、セラミック治療、矯正治療など、患者さんの状態に応じたオーダーメイドの治療を行います。
当院では、インプラント治療において「設計治療®」を採用しています。これは、コンピュータシミュレーション技術を用いて、歯科専用CTと口腔内スキャナで撮影した三次元データを合成し、患者さんごとに異なる骨の状態を把握しながら、インプラントを埋入する最善の位置を決めていく方法です。
メインテナンス(再発防止)
治療が完了したら終わりではありません。
むしろ、ここからが本当のスタートです。歯周病は再発しやすい病気であり、定期的なメインテナンスが不可欠です。当院では、プロによる専門的なクリーニングと定期チェックを推奨しています。
特にバイオフィルム除去に特化した「GBTメンテナンス」により、再治療リスクを最小限に抑えます。
費用について・・・自費診療専門という選択
当院は自費診療専門の歯科医院です。
「費用が高いのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、自費診療には保険診療にはない大きなメリットがあります。
自費診療のメリット
保険診療には制度上の制約があり、使用できる材料や治療方法が限られています。一方、自費診療では、審美性や健康面など、患者さんの価値観やライフスタイルに合わせて最適な治療選択を行うことができます。
例えば、セラミックやジルコニアといった天然歯に近い審美的な材料、最新のインプラントシステム、歯周組織再生療法など、より質の高い治療を提供できるのです。
長期的な視点での投資
確かに初期費用は保険診療より高額になります。
しかし、質の高い治療を受けることで、再治療のリスクが減り、長期的には経済的負担が少なくなる可能性があります。何より、しっかり噛めて、見た目も美しく、長持ちする治療は、QOL(生活の質)の向上という、お金では測れない価値をもたらします。
当院では、初診時のカウンセリングで複数の治療オプションとそれぞれの費用をご提示し、患者さんが納得して選択できるようサポートしています。
よくある質問・・・患者さんの不安にお答えします
Q: 他院で「抜歯しかない」と言われた歯でも残せる可能性はありますか?
A: 可能性はあります。歯科医師の技術レベルや専門性によって、抜歯の判断基準は異なります。歯周病専門医や高度な技術を持つ歯科医師であれば、一般的には「抜歯」と判断される歯でも保存できるケースがあります。セカンドオピニオンとして、専門医に相談されることをお勧めします。
Q: 治療期間はどのくらいかかりますか?
A: 患者さんの状態によって大きく異なりますが、重度歯周病のフルマウス再建の場合、6ヶ月から1年以上かかることもあります。ただし、当院では遠方からの患者さんも多いため、できる限り通院回数を減らす工夫をしています。
Q: 痛みはありますか?
A: 当院では、患者さんの不安や痛みを和らげるため、経験豊富な麻酔医による「セデーション(静脈内鎮静法)」を利用できます。うたたね感覚で手術に臨むことができ、術中の記憶もほとんど残りません。また、術中は生体モニタリングで患者さんの身体を常に見守っています。
Q: 年齢制限はありますか?
A: 基本的に年齢制限はありません。ただし、全身状態や服用されているお薬の内容によっては、治療方法を調整する必要があります。まずはご相談ください。
まとめ・・・諦めずに専門医に相談を
重度の歯周病で歯がボロボロになっても、決して諦める必要はありません。
適切な診断と高度な治療技術があれば、再び噛める喜びと笑顔を取り戻すことができます。抜歯の判断は、歯科医師の技術レベルや専門性によって大きく異なります。一般的には「抜歯しかない」と言われた歯でも、歯周病専門医やインプラント専門医であれば保存できる可能性があるのです。
当院では、日本口腔インプラント学会認定のインプラント専門医として、25年以上の臨床経験を活かし、難症例の方にも対応しています。完全予約制で、初診から治療、フォローアップまで理事長が一貫して対応する体制を整えています。
「歯がグラグラで噛めない」「他院で抜歯と言われた」「入れ歯が合わない」など、お口のお悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。複数の治療オプションをご提示し、あなたに最適な治療計画を一緒に考えていきます。
シャングリラデンタル横浜歯科矯正歯科
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい5丁目1番2号 横浜シンフォステージ ウエストタワー3F
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電話:045-211-4618
診療時間:10:00~19:00(不定休、祝日は休診)
お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。あなたの笑顔と健康を取り戻すお手伝いをさせていただきます。

著者情報
理事長 梶原 基弘NORIHIRO KAJIWARA
- 経歴
- 九州歯科大学口腔インプラント科医員 外来診療チーム長
- 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野(口腔インプラント学)大学院歯学博士
- 関東医療法人 東京都、神奈川県にて院長に
- 資格・所属学会
- 日本口腔インプラント学会
- JSOI 日本口腔インプラント学会専門医
- 九州歯科大学歯学博士
投稿論文
- Soft tissue biological response to zirconia and metal implant abutments compared with natural tooth: microcirculation monitoring as a novel bioindicator. Kajiwara N, Masaki C, Mukaibo T, Kondo Y, Nakamoto T, Hosokawa R.Implant Dent. 2015 Feb;24(1):37-41.
- Comparison of plaque accumulation and soft-tissue blood flow with the use of full-arch implant-supported fixed prostheses with mucosal surfaces of different materials: a randomized clinical study. Kanao M, Nakamoto T, Kajiwara N, Kondo Y, Masaki C, Hosokawa R.Clin Oral Implants Res. 2013 Oct;24(10):1137-43.
Two-dimensional real-time blood flow and temperature of soft tissue around maxillary anterior implants. Nakamoto T, Kanao M, Kondo Y, Kajiwara N, Masaki C, Takahashi T, Hosokawa R.Implant Dent. 2012 Dec;21(6):522-7.
