インプラントのよくあるトラブル事例10選|腫れ・痛み・脱落への対処法

インプラント治療におけるトラブルの実態
インプラント治療は失った歯を補う優れた治療法として広く普及しています。しかし、外科手術を伴う高度な治療であるため、適切な知識と技術がなければトラブルが生じる可能性があります。
国民生活センターには毎年60~80件程度のインプラント治療に関する危害情報が寄せられています。手術直後から痺れが取れない、治療前の身体状態確認が不十分だったなど、さまざまな相談が報告されているのです。
適切な歯科医院を選び、正しい知識を持つことでトラブルのリスクは大幅に軽減できます。本記事では、インプラント治療で起こりうる主なトラブル事例と、その対処法について詳しく解説します。
トラブル事例1:手術後の腫れと痛みが長期化する
正常な腫れと異常な腫れの見分け方
インプラント手術後、2~3日程度の腫れや痛みは正常な反応です。
通常は1週間ほどで症状が軽減します。しかし、埋め込むインプラントの本数が多い場合や骨移植を行った場合は、1週間から10日程度腫れが続くこともあります。処方された痛み止めや抗生物質を正しく服用していれば、多くの場合は問題なく治癒していきます。
異常なケースとその原因
1ヶ月以上痛みや腫れが続く場合は要注意です。
術中・術後の感染予防が不十分だった、インプラントが適切な位置に埋入されていない、細菌感染が起きているなどの可能性が考えられます。治療環境の衛生管理が徹底されていない歯科医院では、細菌感染のリスクが高まります。また、歯周病治療が不十分なまま手術を行うと、インプラント周囲炎を発症しやすくなるのです。
トラブル事例2:インプラントが固定されず脱落する
固定不良の主な原因
インプラントは顎の骨と結合することで機能します。
しかし、埋入位置や深さ、角度が適切でない場合、骨との結合が得られません。ドリルで骨に穴を開ける際、骨の硬さを考慮せず適切な速度や冷却を行わないと、骨がダメージを受けてしまいます。これにより骨の再生能力が低下し、インプラントが固定されなくなるのです。
インプラント周囲炎による脱落
細菌感染はインプラント脱落の大きな原因の一つです。
インプラント周囲に歯垢や歯石が溜まると、天然歯よりも炎症が進行しやすく、骨が吸収されてインプラントが脱落します。日頃の口腔清掃や定期検診を怠ると、このリスクが高まります。メンテナンス不足による感染は患者様自身が防ぐ必要があるため、治療後のケアが非常に重要なのです。
トラブル事例3:神経損傷による痺れや麻痺
下顎のインプラント治療で起こりやすい症状
下顎の骨の中には下歯槽神経という重要な神経が通っています。
インプラント手術の際にこの神経を誤って傷つけると、唇や顎、歯ぐきに痺れや麻痺が生じます。治療前にCT撮影などで神経の位置を正確に把握していない場合、このようなトラブルが起こりやすくなります。レントゲン撮影だけでは神経や血管の走行を十分に確認できないため、CT撮影による精密な診査診断が不可欠です。
早期対処の重要性
神経損傷による症状は、早期に適切な処置を行えば改善される可能性があります。
しかし、歯科医師の対応が遅れたり不適切な処置が行われたりすると、症状が長引く要因となります。手術直後から異常な痺れや麻痺を感じた場合は、速やかに担当医に相談することが大切です。
トラブル事例4:上顎洞へのインプラント迷入
上顎洞迷入の症状と原因
上の奥歯のインプラント治療では、上顎洞という鼻の横にある空洞にインプラントが貫通したり脱落したりするトラブルがあります。
症状としては、鼻の横あたりの痛みや腫れ、鼻から膿が出る蓄膿症などが現れます。術前の診査や診断が不十分だった場合や、上顎洞に対する処置が適切に行われなかった場合に発生しやすいトラブルです。骨の厚みが不足している部位では、ソケットリフトやサイナスリフトといった骨造成処置が必要になります。
摘出手術が必要なケース
上顎洞内にインプラントが迷入した場合、摘出手術が必要となります。
患者様の負担は大きく、治療期間も長期化します。このようなトラブルを防ぐためには、CT撮影による精密な診査診断と、高度な技術を持つ歯科医師による治療が不可欠です。
トラブル事例5:出血が止まらない重大事故
動脈損傷のリスク
インプラント手術では、術中や術後に出血が止まらず救急搬送に至るケースも報告されています。
下顎臼歯部分への手術において、オトガイ下動脈や舌下動脈の位置をCT検査で把握していなかった場合、ドリルで削る際に誤って動脈を傷つけてしまう可能性があります。動脈を損傷すると大量出血を招き、気道を圧迫して窒息する恐れもあるのです。過去には死亡事故も発生しており、命に関わる重大なトラブルといえます。
安全な治療のための必須検査
レントゲン撮影だけでインプラント治療を行うことも可能ですが、安全性は大幅に低下します。
CT撮影による動脈の走行確認は、より安全で確実な治療のために不可欠です。血管や神経の解剖学的位置を正しく把握していない状態での手術は、重大な事故につながる可能性があります。
トラブル事例6:噛み合わせの不具合
不適切な咬合調整による問題
インプラント治療後の噛み合わせ調整が適切でないと、さまざまなトラブルが生じます。
特定の歯に過剰な負担がかかり、人工歯が破損したり外れたりすることがあります。また、噛み合わせの不具合は細菌感染のリスクを高めることにもつながります。アバットメントの締め付けが不十分な場合も、人工歯が緩んだり外れたりする原因となるのです。
正しい咬合調整の重要性
適切な噛み合わせは、インプラントの長期的な成功に不可欠です。
正しい咬合調整ができる医師のもとで治療を行うことをお勧めします。治療後も定期的なメンテナンスで噛み合わせをチェックし、必要に応じて調整を行うことが大切です。
トラブルを防ぐための歯科医院選びのポイント
専門医・認定医資格の確認

インプラント治療は歯科医師免許があれば誰でも行えますが、安全な治療には専門性が求められます。
日本口腔インプラント学会認定のインプラント専門医など、専門的な資格を持つ歯科医師を選ぶことが一つの基準となります。豊富な経験と知識のある歯科医師による精密治療とメンテナンスがあってこその治療といえるでしょう。
治療環境と設備の確認
CT撮影装置やマイクロスコープなど、必要な設備が揃っているかも重要です。
また、治療室の衛生管理が徹底されているかどうかも確認しましょう。清潔な環境を維持するための設備が整っていない歯科医院では、感染症のリスクが高まります。完全個室の治療環境であれば、より安心して治療を受けられます。
治療後のメンテナンスとアフターケア
定期検診の重要性
インプラント治療は、治療が終わったら終了ではありません。
治療後の快適な状態を長く維持するためには、その後のアフターケアが非常に重要です。患者様一人ひとりに合ったメンテナンスプランで、治療完了後もしっかりとサポートを受けることが大切です。定期的な検診により、問題の早期発見と適切な対処が可能になります。
日常的な口腔ケア
セルフケアも欠かせません。
歯磨きと歯科医院でのメンテナンスの両方が不十分だと、感染リスクが高まります。インプラントの寿命はメンテナンス次第ですので、日頃の口腔清掃を徹底して行いましょう。
まとめ:安全なインプラント治療のために
インプラント治療は高い成功率を誇る優れた治療法ですが、適切な知識と技術がなければトラブルが生じる可能性があります。
腫れや痛みの長期化、インプラントの脱落、神経損傷、上顎洞への迷入、出血、噛み合わせの不具合など、さまざまなトラブル事例を理解しておくことが重要です。これらのトラブルの多くは、精密な診査診断、高度な技術、適切な治療環境、そして丁寧なアフターケアによって防ぐことができます。
信頼できる歯科医院を選び、治療前のカウンセリングで十分な説明を受け、治療後も定期的なメンテナンスを続けることで、安全で長持ちするインプラント治療が実現できるのです。
インプラント治療をご検討の方は、ぜひ専門的な知識と豊富な経験を持つ歯科医院にご相談ください。詳細はこちら:シャングリラデンタル横浜歯科矯正歯科

著者情報
理事長 梶原 基弘NORIHIRO KAJIWARA
- 経歴
- 九州歯科大学口腔インプラント科医員 外来診療チーム長
- 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野(口腔インプラント学)大学院歯学博士
- 関東医療法人 東京都、神奈川県にて院長に
- 資格・所属学会
- 日本口腔インプラント学会
- JSOI 日本口腔インプラント学会専門医
- 九州歯科大学歯学博士
投稿論文
- Soft tissue biological response to zirconia and metal implant abutments compared with natural tooth: microcirculation monitoring as a novel bioindicator. Kajiwara N, Masaki C, Mukaibo T, Kondo Y, Nakamoto T, Hosokawa R.Implant Dent. 2015 Feb;24(1):37-41.
- Comparison of plaque accumulation and soft-tissue blood flow with the use of full-arch implant-supported fixed prostheses with mucosal surfaces of different materials: a randomized clinical study. Kanao M, Nakamoto T, Kajiwara N, Kondo Y, Masaki C, Hosokawa R.Clin Oral Implants Res. 2013 Oct;24(10):1137-43.
Two-dimensional real-time blood flow and temperature of soft tissue around maxillary anterior implants. Nakamoto T, Kanao M, Kondo Y, Kajiwara N, Masaki C, Takahashi T, Hosokawa R.Implant Dent. 2012 Dec;21(6):522-7.
