インプラント治療で使われる人工骨の種類と特徴完全ガイド

インプラント治療における人工骨の役割と必要性
インプラント治療は、失った歯の機能と審美性を回復する優れた方法です。しかし、歯を失ってからの時間が経過すると、顎の骨が徐々に痩せていくという現象が起こります。
骨の量が不足している状態でインプラントを埋入すると、人工歯根が骨を突き抜けてしまったり、十分に固定できなかったりするリスクがあります。このような場合に活躍するのが「人工骨」なのです。
人工骨は、骨の再生を促す「足場」として機能し、時間をかけて自分自身の骨に置き換わっていきます。インプラント治療の成功率を高め、長期的な安定性を確保するために欠かせない存在なのです。
では、実際にどのような種類の人工骨が使われているのでしょうか?それぞれにどんな特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
日本で主に使用される人工骨の種類
インプラント治療で使用される人工骨には様々な種類がありますが、日本で主に使用されているのは大きく分けて2種類です。
β三リン酸カルシウム(β-TCP)とハイドロキシアパタイト(HA)系の人工骨です。それぞれ特徴が異なり、症例に応じて使い分けられています。
β三リン酸カルシウム(β-TCP)は、自分の骨に置き換わりやすいという大きな利点があります。体内で徐々に吸収され、新しい骨に置き換わる性質を持っているため、現在の主流となっています。
商品名でいうと、セラソルブ、オスフェリオン、バイオペックス、スーパーポアなどが該当します。これらは粒子の大きさによっても特性が異なり、症例に合わせて選択されます。
一方、ハイドロキシアパタイト(HA)系の人工骨には、アパセラム、ネオボーン、カルシタイトなどがあります。HAは生体親和性が高く、長期間安定して形状を維持する特徴があります。
どちらも砂のような製品で、粒子の細かいもの(0.15mm~0.5mm)から粗いもの(1.0mm~3.0mm)まで様々です。粒子が細かいものは多くの量が入れやすい反面、漏れやすいという欠点もあります。
骨造成の主な方法と適用症例
インプラント治療において、骨の量が不足している場合に行われる「骨造成」には、いくつかの方法があります。症例によって最適な方法が選ばれます。
ソケットリフト法
上顎の奥歯部分に骨の高さが3~5mm以上ある場合に適用される方法です。インプラントを埋入する穴から専用の器具でシュナイダー膜(上顎洞の粘膜)を持ち上げ、その空間に骨補填剤を注入します。
傷口が小さく、痛みや腫れが最小限に抑えられるメリットがあります。また、骨造成とインプラント埋入を同時に行えるため、治療期間は約4ヶ月程度と比較的短いのが特徴です。
サイナスリフト法
上顎の骨の高さが極端に少ない場合(3mm未満)に選ばれる方法です。頬側の歯肉を切開して骨の窓を作り、上顎洞の粘膜を持ち上げてから骨補填剤を入れます。
従来は骨造成とインプラント埋入を別々に行うため10ヶ月~1年程度の治療期間が必要でしたが、最新の技術では両方を同時に行い、4ヶ月程度で完了させることも可能になっています。
GBR法(骨誘導再生法)
顎の骨の高さ・幅ともに不足している場合に有効な方法です。インプラントを埋入した後、自家骨や骨補填剤を注入し、メンブレンと呼ばれる特殊な膜で覆います。
これにより骨が再生するためのスペースを確保し、新しい骨の形成を促進します。骨造成とインプラント埋入を同時に行うため、治療期間は4~6ヶ月程度です。
人工骨のメリットとデメリット

人工骨を使用したインプラント治療には、いくつかのメリットとデメリットがあります。治療を検討する際には、これらを十分に理解しておくことが大切です。
メリット
最大のメリットは、骨量が不足している患者さんでもインプラント治療が可能になることです。以前は「骨が足りないからインプラントは無理」と言われていた方も、現在では治療を受けられるケースが増えています。
また、自家骨(自分の体から採取した骨)を使用する場合と比べて、体への負担が少ないという利点もあります。自家骨移植では別の部位に手術が必要ですが、人工骨ではその必要がありません。
デメリット
一方で、人工骨を使用することで治療期間が長くなる可能性があります。骨が十分に再生するまで待つ必要があるためです。
また、治療費が高くなることも考慮すべき点です。人工骨の材料費や骨造成の手術費用が追加されるため、通常のインプラント治療よりも費用が増加します。
さらに、人工骨は感染に弱いという特性があります。特にハイドロキシアパタイトをコーティングしたインプラントは、埋入が深すぎないよう注意が必要です。
インプラント治療における人工骨選択のポイント
人工骨を選ぶ際には、患者さんの症例に合わせて最適なものを選択することが重要です。では、歯科医師はどのような点を考慮して人工骨を選んでいるのでしょうか。
まず考慮されるのは、骨の不足状態です。高さが足りないのか、幅が足りないのか、あるいはその両方なのかによって、適した骨造成法と人工骨の種類が変わってきます。
また、患者さんの骨の質や治癒力も重要な要素です。骨の再生能力が高い方であれば、β-TCPのような吸収性の高い材料が適しています。一方、骨の再生能力が低い場合は、HAのような安定性の高い材料が選ばれることもあります。
さらに、治療期間の希望や予算も考慮されます。早期に治療を完了させたい場合は、骨造成とインプラント埋入を同時に行える方法が選ばれることが多いです。
いずれにしても、インプラント治療は長期的な視点で行うことが大切です。短期的な結果だけでなく、5年後、10年後も安定して機能するよう、慎重に計画を立てることが成功への鍵となります。
まとめ:インプラント治療と人工骨の未来
インプラント治療における人工骨技術は、日々進化を続けています。β三リン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトなどの基本的な材料に加え、より生体親和性の高い新素材の研究も進んでいます。
また、骨造成の技術も向上し、従来は「インプラント不可能」と言われていた症例でも治療できるケースが増えています。特に、骨造成とインプラント埋入を同時に行う技術の発展により、治療期間の短縮も実現しています。
インプラント治療を検討される際は、十分な骨の量があるかどうかを確認することが重要です。もし骨量が不足していても、人工骨を用いた骨造成によって治療の可能性が広がることを覚えておいてください。
最適な治療法を選ぶためには、インプラント専門医による詳しい診断と説明を受けることをお勧めします。シャングリラデンタル横浜歯科矯正歯科では、日本口腔インプラント学会認定のインプラント専門医による高度な治療を提供しています。インプラント治療についてのご相談は、ぜひシャングリラデンタル横浜歯科矯正歯科までお気軽にお問い合わせください。

著者情報
理事長 梶原 基弘NORIHIRO KAJIWARA
- 経歴
- 九州歯科大学口腔インプラント科医員 外来診療チーム長
- 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野(口腔インプラント学)大学院歯学博士
- 関東医療法人 東京都、神奈川県にて院長に
- 資格・所属学会
- 日本口腔インプラント学会
- JSOI 日本口腔インプラント学会専門医
- 九州歯科大学歯学博士
投稿論文
- Soft tissue biological response to zirconia and metal implant abutments compared with natural tooth: microcirculation monitoring as a novel bioindicator. Kajiwara N, Masaki C, Mukaibo T, Kondo Y, Nakamoto T, Hosokawa R.Implant Dent. 2015 Feb;24(1):37-41.
- Comparison of plaque accumulation and soft-tissue blood flow with the use of full-arch implant-supported fixed prostheses with mucosal surfaces of different materials: a randomized clinical study. Kanao M, Nakamoto T, Kajiwara N, Kondo Y, Masaki C, Hosokawa R.Clin Oral Implants Res. 2013 Oct;24(10):1137-43.
Two-dimensional real-time blood flow and temperature of soft tissue around maxillary anterior implants. Nakamoto T, Kanao M, Kondo Y, Kajiwara N, Masaki C, Takahashi T, Hosokawa R.Implant Dent. 2012 Dec;21(6):522-7.
